皆さんはどうお思いでしょうか? 私にはどうも最近の巨大ロボットもののアニメは昔と比べて随分とスケールが小さくなってしまったように思えるのだ。戦う場所は殆ど地球上のみ、いや下手をすると一つの町内での戦い、しかも戦う当の正義の味方ははほとんどが小中学生、更にあまつさえ大抵の悪役(又はその下っ端)は1クールも持たない(少しはタイムボカンシリーズを見習って欲しいものだ)……サン○イズのアニメでは昔も“左遷”があった、しかし多くの悪役は再び戻って来ている、それはどちらかというと復活のための異動であったとも言える。そして、その悪役が放つ敵方のメカもちょっと前の戦隊ものにでも出て来そうなオチャラケた奴等ばかり(これはタイムボカンシリーズを見習っても……あまり変わらないか(笑))。
あぁ! 昔のように宇宙の端から端を舞台にしたようなスケールの大きなお話しはもう見られなくなってしまったのであろうか?
……と思っていたら出る時は出るもんですねぇ。4月から始まったアニメ番組「伝説特急イデガイン」はまさにそ〜言った私の欲求不満を解消してくれる壮大なスケールのアニメであった。アニメの放送自体まだ継続中ということもあるので、ストーリー自体の紹介は簡単に済まそう。
度重なる第三セクター人の爆撃に襲われ、逃げ場を失ったヌーベルソロシテ
ィの人々はやむなくその昔JR東日本が製造した高速新幹線「のぞみ」「つば
さ」そしてもう一両の謎の巨大な蒸気機関車の中へと避難した。
と、その時その3両の列車が突如動き出し「のぞみ」はロボットに、「つば
さ」はジェット機へと変形を、そして更にその2両が巨大な蒸気機関車へと合
体を開始したのだった……
1、2話こそヌーベルソロシティに留まっていたものの、それ以降話しは一気に大宇宙へと展開する。
巨大な蒸気機関車(型の宇宙船?)ロコモライザーと二両の新幹線「のぞみ」「つばさ」(若干失笑)が大宇宙を駆ける姿は将に「銀河鉄道999」か「銀河疾風サスライガー」を髣髴とさせるものがある。それだけではない、第2話の動輪やカンテラ、真鍮メッキされたサッシのひとつひとつに至るまで背景の映りこみが描き込まれ、蒸気機関車(?)の重厚な動きを再現した悪魔的な作画の三両の列車の合体シーン、ストーリー自体の2つの種族の存亡を懸けて数百光年という文字通りの天文学的なスケールで展開される壮大なストーリーなどは明らかにサ○ライズの「伝説巨神イデオン」を意識していると思われる作りになっているのだ。
しかし、「伝説特急……」の面白さは単なる過去のノスタルジーに頼ったものではない。むしろ過去のそれらの作品が持っていた……そして様々な紆余曲折の果てに現在のアニメ作品が無くしてしまった「面白い!」のエッセンスをしっかりと持ち合わせているアニメなのである。
さて、前置きが長くなってしまったが(笑)、このコラムは書評である(苦笑)。従って私が紹介しなければならないのは、アニメの「伝説特急イデガイン」ではなく、小説「伝説特急イデガイン〜無限軌道破壊司令〜」なのだ。
良くある話しとして、アニメの小説化というものがある。大抵の場合「メディアミックス」と称してアニメの人気に便乗して他のメディアの製品を売りつける……結果として小説版とは名ばかりの、安易に脇役をクローズアップしたりアニメ中のエピソードの一部を水増ししたような、大して面白くもないものが多かった。
もし読者のみなさんがこの小説版「伝説特急……」をそのようなものだろうと思って手にしていいなかったとしたら、残念ながらあなたは“ハズシ”ている。……断言しよう。この小説は絶対に面白い!
その面白さの秘密のひとつは、単なるアニメの付け足しではなく逆にアニメと対をなすかのように展開していくストーリー作りにあるのではないかと思う。例えばアニメの方のストーリーは徐々に物語の中心に近づいて行くのに対して、小説版の方ではいきなり核心に迫ってくる。その段階で読者はもう話しの中に取り込まれてしまうしかない、と言う感じなのだ!……しかしアニメ版自体がまだ進行途中だというのに、そんな手法を使って大丈夫なのだろうと不安になってくる向きもあるかもしれないが、しかしそれは心配なさそうだ。……と言うのもアニメ版の監督であり、小説版の作者でもある呑戸監督の弁では、このシリーズは単なる謎解きで終わってしまうお話しではないので、予め(謎解き的な意味で、結果が分かってしまったとしても)別に問題は無いらしい。
以上のような経緯から、小説の方も今後もどんどん発行されるらしい。億間書店発表のラインナップを見ると小説版の次回の発行予定が既に入っている。
次回タイトルは「混戦!チェリー・ゲイト!」……楽しみである。